【スコーン】ナイフを使わず手で割る理由は?
Scone~スコーン~
主産国/スコットランド・イギリス
≪パン言葉≫
イギリスのスコットランド地方の伝統的なパン菓子。もとは生地を型抜きせずに焼きあげるバンノック(bannock)という大衆的なビスケットが原型ですが、18世紀ビクトリア王朝時代には上流階級で習慣化した“アフタヌーンティー”の定番として親しまれるようになりました。3段仕立てのケーキスタンドはこの時代を受け継ぐスタイル。下段にサンドイッチ、中断にスコーンやクッキー、上段にケーキで、下からいただくのがイギリスの流儀。
スコーンの名前は「The Stone of Scone(スコーン城の石)」に由来するというのが一説。これはスコットランド宮殿のスコーン城にあった、歴代の国王の戴冠式(たいかんしき)に使用された椅子の土台で別名 “運命の石”とも。いわゆる王の玉座として意味づけられていたその石こそ、スコーンのモチーフ。その神聖なカタチゆえ、ナイフで切ったりはせず、手で横から半分に割って食べるマナーが定着しました。
ベーキングパウダーで膨らませる作り方からすれば、パンというよりビスケット。本場イギリスでは、ジャムやはちみつとともに、クロテッドクリーム(※clotted)が添えられるのが一般的。
※クロテッドクリーム(Clotted cream)
脂肪分の高い牛乳を、弱火で煮詰めたものをひと晩おいて表面に固まる脂肪分を集めて作られます。脂肪分は60%程度。バター(80%)よりは低く、生クリーム(30〜48%)よりは高い換算。濃厚なイメージですが、口どけはいたってなめらか。「クロテッド」とは「凝固した、固まった」という意味。(参考:Wikipedia)
≪パンキャラ≫
巡り合わせを信じて今を楽しむハッピー族。
≪スコーンからのメッセージ≫
わたしは気取らぬ大衆パン菓子として地味にデビューしましたが、ヴィクトリア王朝時代、上流階級に見染められて、一気にステージが上がりました!キレイなお皿の上に、クリームやらジャムやらが添えられ、丁寧に淹れた紅茶なんかとともに、セッティングされたりすることもしばしば。今でも、ホテルのラウンジなどでは、ちょっと澄ました顔でギャルソンさんに運ばれたりしています。
「庶民出身のくせに、ケーキスタンドを飾る仲間に抜擢されるなんて、ズルイ!」
そんな声が聞こえてきそうですね。
でも、これは、ひとつの「巡り合わせ」なのではないか、と思います。時代のタイミング、サンドイッチとケーキの中間的要素というポジション、贅沢なクリームやジャム楽しむために、品のある土台として丁度良い存在だった、など。自らが熱望したわけでもないのです。こだわりをもたず、ありのままで時代に身を委ねていたら、いつの間にか案外良いポジションを獲得していた、というような。
そう、この「委ねる」というのが簡単そうでいて、なかなか難しいものです。何かを強烈に熱望している時などは特に、ですね。望んでも、望んでも、描く未来が近づいてこないような日々、あなたにも経験があるのではないでしょうか。望みが執着になってしまっている状態、そう、これは「今それが手に入っていない」という欠乏の思いが強調されて増幅されてしまいます。そうなると強くなるのが「そうならなかったらどうしよう」という思い。そして、望めば望むほど、その望みを引き寄せどころか引き離してしまう、という典型的な負のスパイラルへ。
そんな時は、鳥にでもなったつもりでその場から空へ飛んでみましょう。空から目線でいると、焦っている自分も苦しんでいる自分も身動きができていない自分が何ともちっちゃく目に映るものです。で、「まぁ、いっか」と思えてきたり。
わたしがスコーンとしてアフタヌーンティーに呼ばれたのは、時代に身を任せていたらということに他なりません。起きることは、ベストなタイミングでやってくる。それは、思い通りではないかもしれないけれど、結果、良い方向へ導かれている、と、そう思えます。
あっ、うっかり、上流階級にもてはやされたお話しばかりにフォーカスしてしまいました。もちろん、ベーカリーやコンビニに並ぶ、袋詰めされた、気取らないわたしもわたしです。おウチであなたのお茶タイムのおともにだって、機嫌良くお付き合いさせていただきますので、ご安心を。どちらのわたしも本物。環境によって、お嬢様風にも庶民風にもふるまえる達者な役者、それがわたしなのです。
日々の暮らしの途中、何かで空回りしはじめたら、素のままでいたら、いつの間にか上流階級デビューを果たしてしまったわたしにスポットライトをあててください。何しろ運命の石ですから。そして、あなたは、いつだって「ベストな巡り合わせでタイミングの良い出来事が起こる」って信じてみてくださいね。
今が望む状況でなくても、焦らないで。未来を悲観しないで、安心して今を楽しみましょう。まずは、スコーンと紅茶を!
パン言葉とは?
パン言葉、パンキャラは個々のパンの特徴から、筆者の主観により導きだした表現です。
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