シェルブールの雨傘。“ガレット・デ・ロア”の登場でジュヌヴィエーヴの哀しさが一層大きく!
「シェルブールの雨傘」何度観ても、やっぱり、いい。
誰かを「待つ」ということは、いつの時代も難しいものです。
大大大好きな恋人の2年の兵役。
気持ちが変わってしまうのではないか。
戻ってこないのではないか。
実に、不安です。
で、つい、目の前に差しのべられた安泰に手を染めてしまう。
ズルいけれど、信じきる勇気はもろいものです。気持ちはわかる~。。。
終盤のシーン。燃えるような恋とは違うカタチでお互い家庭を持ち、日々を平穏に過ごしているその姿は、小さな罪悪感を埋めているような切なさがあって、胸が本当に痛くなります。置き去られてしまった、本当の気持ちだけが、ただ、ただ、行き場がない。。。
それにしても、ジュヌヴィエーヴ役のカトリーヌ・ドヌーヴ。各シーンいちいち見惚れてしまう美しさです。美人は3日で飽きるっていうけれど、それはやっぱり飽きられる理由がある人であって、カトリーヌ・ドヌーヴの場合はちっとも飽きません。
この映画に、フランス伝統の焼菓子の“ガレット・ロア” が登場していること、お気づきでしょうか。新年のお祝い菓子の“ガレット・ロア” 。皆でテーブルを囲めば、賑やかな団らんが繰り広げられるはずのところですが、ジュヌヴィエーヴはちっとも楽しくありません。哀しみに暮れている気持ちをもっと増幅させる効果があるような。
ジュヌヴィエーヴと雨傘店を経営する母親、そして結婚相手となる宝石商との夕食のシーン。“ガレット・ロア”を切り分けます。ケーキに小さな人形が入っていたら、幸運の証。で、もちろん、ジュヌヴィエーヴの皿に入っているわけです。たぶん、母親の計らいで。
フランスでは、東方の3博士がキリストの誕生をお祝いした公現節に、この“ガレット・デ・ロア”を食べてお祝いする風習があるそうです。この行事は1月いっぱいの間、それぞれ都合のいい日に楽しまれている模様。
薄いけど、結構重たいです。さすが、アーモンド粉。。。
ガレットといっても、ここ数年で日本でもすっかりおなじみになったブルターニュ地方のそば粉のガレットではなく、あくまでも“ガレット・デ・ロア”(王様たちのガレット)。一般的には、アーモンドクリーム入りのパイ菓子です。写真はPAULのもの。
おもしろいのは、パイの中にフェーヴ(仏語で空豆の意味)と呼ばれる陶製の小さなチャームがひとつだけ入れてあります。
家族や仲間で切り分けた時、このフェーヴが入っていた人は<当たり>で、王冠をかぶって祝福を受けられ、一年の幸福が約束される、と伝えられています。(市販のパイにはたいがい一台に一個、王様の王冠がついていています。豆まきの豆に鬼のお面が付いているように。。。)
フェーヴには、その昔は本物の空豆が使われていたようで、1870年代にお人形に発展したのだとか。今では陶製やプラスチックのものもあります。
それにしても、フェーヴが入っているパイって、ちょっとづつ食べないと、うっかり<当たり>人形を飲み込んでしまいますね。キケーン!
ちなみにPAULのガレット・デ・ロワには、パン職人のお人形が入っていました!カワイイ!
フランス現地では、世界的な有名ブーランジェリー“ポワラーヌ”や“PAUL”のガレット・デ・ロワは高級品としてのポジションで、一般家庭に持ってくと、ウワ、すごい!ってことになる、と日本在住のフランス人の人が言ってました。